動物の病気を治療する場合,人と同じように,家庭での内服薬による治療,通院による治療,そして入院にて行う治療の3つの方法が考えられます。重症疾患や手術が必要な動物の多くは入院治療が必要となりますが,動物達の病気をより早く治すために,あるいはより安全に検査や治療を行うために入院が必要となる場合もあり,必ずしも重症疾患ばかりとは限りません。当院では,飼い主の方が安心して動物を入院させて頂けるように,そして入院中の動物がより快適な生活が送れるようにハード・ソフト面共に努力しております。
※混合ワクチン未接種動物の入院について
  当院では重症疾患の入院治療や外科的治療を積極的に行っていますが,それらの動物では免疫力が低下しており,伝染病に対する感染の危険性が高くなります。このため,院内感染に対する予防対策を徹底しております。伝染病やその疑いのある動物を入院させる場合には,隔離して他の動物と接触することはありませんが,隔離施設には限りがあります。
  このため,定期的なワクチン接種を飼い主の方が怠ったことにより発症したウイルス性の感染症(伝染病)あるいはその疑いのある動物に関しては,状況によっては入院をお受けできない場合があります。また,伝染病の混合ワクチンを1年以内に接種していない動物についても,入院をお断りする場合がありますのでご了承下さい。
なお,1年以内に混合ワクチン接種が行われていない動物をお預かりする場合には,病態にもよりますが入院中にワクチンを接種させて頂くことがあります。また,ノミやダニなどの外部寄生虫や内部寄生虫が検出された場合には,必要に応じて,駆虫させて頂きます。

 

検査目的
・時間のかかる検査
・リスクを伴う検査(特に麻酔が必要となる場合など)
治療目的
・入院管理が必要な内科的治療
・外科的治療
その他の目的
・不妊手術
・歯石除去
・その他
 

入院に関する十分な説明をさせて頂きます。
完全看護ですので付き添いは必要ありません。
入院に同意が得られましたら,受付で当院規定の同意書の内容を再度ご確認の上,署名・捺印をして頂きます。この時,印鑑が必要ですが,拇印でもかまいません。
入院治療(手術の場合も含む)の場合の治療費お支払いは,入院時に内金(前受金)としてしてお幾らかお預かりし,退院時に精算させて頂きます。詳しくは後述の入院治療費の精算を参照して下しい。
入院に際して,飼い主の方が特別にご用意して頂く物はありませんが,ご希望があればお気に入りのおもちゃや敷物などお預かりし,動物の安心のために利用させて頂きます。
動物の普段の生活習慣などでお聞きしていないことがありましたら,受付にお伝え下さい。
面会の可否や退院の日時あるいは次の連絡日などについてご不明な場合には受付でご確認下さい。
緊急連絡先がお聞きしている連絡先と異なる場合にはお知らせ下さい。
 

入院中の動物は衛生的な環境の中で24時間完全看護となっております。
入院動物は,比較的病態の安定した動物のための一般入院室,手術後の動物や集中治療の必要な動物を看護するための回復室(リカバリールーム)のICUまたは処置室ICUでそれぞれ管理します(施設紹介参照)。
すべての部屋は冷暖房はもちろんのこと,24時間空気清浄機が作動しており,殺菌灯を完備しています。
それぞれの入院ゲージやICUゲージは個別のゲージなっておりステンレス製で動物や人体に安全な強酸性水による消毒が毎日行われており,敷物には消毒済の清潔なタオルや使い捨てのシーツを利用しております。
回復室と処置室に設置されたICUゲージユニットでは,それぞれの動物の状態に合わせた温度や湿度,さらに酸素吸入設備を備えています(医療設備参照)。
一般入院室および回復室にはテレビ監視およびWeb監視モニターシステムが設置してあり,必要に応じて24時間体制での監視が可能となっております。
入院治療中の動物においては,屋外での散歩は通常は行っていません。排尿や排便の習慣上必要となる散歩や運動は,原則として完全な衛生管理を行うことができる院内のパドック(運動場)を使用しています。
入院動物の食事や回数は,それぞれの病態や年齢などを考慮し,カロリー計算をもとに,処方食を中心に与えております。当院でご用意できない特別な食事を希望される場合には,獣医師にご相談の上,ご持参して頂いて結構です。
 

 入院により普段と異なる環境におかれた動物は,性格によってはかなりのストレスを感じることがあるかもしれません。このため,動物を入院させるメリットとデメリットを十分検討した上で入院の方がよりベターと判断された場合が入院の適応となります。入院による治療は,動物の医学的かつ専門的な適切な看護により治療成績の向上と疾患悪化要因の減少と除去,さらには異常の早期発見による救命率の向上が目的となります。少なくとも自宅治療と全く同じでは入院する意味がないと当院では考えています。
 当院での入院動物の一般的な治療方針は以下のようになっております。

入院動物に対しては病態に応じた最高の治療が24時間体制で行われています。
排尿・排便のチェック,嘔吐の有無の確認,呼吸状態など,常に専門スタッフにより観察されており,いち早く動物の変化に気づけるような体制がとられています。
体温,体重測定,聴診などの身体検査は1日2回(午前,午後)行いますが,異常がある場合は必要に応じて何度でも行われます。
必要に応じ各種検査(血液一般検査,血液科学検査,レントゲン,エコー,心電図など)が随時行われ,経時的な病態の変化を見逃さないように注意しています。
重症例では心電図モニターやパルスオキシメータなど生体監視モニター(医療設備参照)を装着して集中管理が行われています。
薬剤の投与は筋肉注射,皮下注射,静脈内注射,静脈内持続点滴,内服薬投与,外科処置部の消毒など病態に応じ適切な処置が行われています。
点滴が必要な動物では,血管内留置針を用いて静脈確保を行った上で,必ず輸液ポンプ(医療設備参照)を利用して静脈内持続点滴による管理がなされるため,安全性と確実性が高く,皮下補液のような苦痛を動物に与えることはありません。また,輸液剤の種類や調合は血清電解質や血液ガス分析に基づいて行われているため,輸液治療の効果が高く体液バランスの不均衡を引き起こす心配がありません。
輸血が必要な場合には,当院で飼育されている供血犬や供血猫からの新鮮血の輸血が随時可能です。

 
※皮下補液について
 皮下補液(皮下点滴)は,動物の皮下(皮膚と筋肉の間)に輸液剤(点滴剤)を大きな注射器または点滴で投与する方法です。動物の皮下に輸液剤のこぶを作ることで徐々にその輸液剤が体内に吸収される仕組みを利用したもので,内容物は違いますがラクダのこぶと似たような原理です。
 一方,静脈内点滴では,血管の中に直接輸液剤を投与するため,急速に大量投与すると血液が急に希釈されるばかりか,心臓や肺に無理な負担がかかります。このため静脈内点滴では投与速度に細心の注意を払う必要があり,いずれにしても短時間で大量の輸液剤を投与することはできません。さらに,人に比べて血管が細い動物に静脈内点滴を行うためには,血管確保と呼ばれるそれなりのテクニックも必要となります。皮下補液であれば,そのような心配がありません。このため皮下補液は,静脈内持続点滴ができない場合の外来での輸液剤の投与法として,多くの動物病院で一般的に行われています。
 しかし,皮下補液は,一度に大量の輸液剤を皮下に注入するわけですから,多少の苦痛を伴い,少なからず動物に不快感を与えます。さらに皮下補液が効果的に働くためには,皮下に投与された輸液剤を患者自身が吸収する能力が必要です。もし,動物の循環機能が低下していたり浸透圧を調整するアルブミンと呼ばれる血液中の蛋白が何らかの理由で低下している場合には,皮下に投与された輸液剤の吸収に時間がかかるばかりでなく,むくみの原因となったり,さらには病態をかえって悪化させてしまうことも少なくありません。このため,うっ血性心不全の動物はもちろんのこと低アルブミン血症が認められる肝不全や消化器疾患あるいは若齢動物に対しては,安易な皮下補液は望ましくありません。
 

入院中の動物との面会を希望される方は,必ず担当獣医師に相談して下さい。
※動物の性格や状態によっては,面会を避けて頂いた方がよい場合があります。
 ただし,そのような場合でも院内のWeb監視カメラシステムにより診察室などに設置されたパソコン画面で入院中の動物の状態をリアルタイムでご確認頂くことは可能です。
  なお,休診日ならびに診療時間外の面会は,特別な事情がない限りお断りしていますのでご了承下さい。

 
※院内Webカメラは入院動物の監視を主な目的としており,一般のインターネットによるWeb上からの閲覧や写真ならびに動画配信は行っておりませんのでご了承下さい。

入院動物の容態についての電話でのお問い合わせは,診察時間内であれば毎日でもかまいません。(ただし担当獣医師が診察中の場合には直接電話にでることができなかったり,お掛け直し頂く場合がありますので,ご了承ください。)
入院動物の容体急変や何か大きな問題が生じた場合には,こちらから直ちにご連絡させて頂きます。
 

入院治療費の精算は,原則として退院時にお願いします。お支払いは,当院規定の診療報酬(消費税含む)から入院内金(前受金)を差し引いた金額を現金にてお支払い頂きます。
入院期間が長期(2週間以上)にわたる場合には,10日〜15日毎に内金(前受金)の追加をお願いする場合があります。
高額な治療費が必要となる場合で,分割払いを希望される方は,必ず入院前に予めご相談下さい。その場合,支払い計画の提示や保証人をお願いすることがあります。
当院ではクレジットカードはご利用できません。
 

 
 健康な動物の手術(去勢・避妊など)はもとより,外科的処置を必要とする疾患は少なくありません。外科的治療は,当院のもっとも力を入れている分野でもあります。そして,より高度な外科手術に対応するために最高級麻酔器と最新で高度医療用の手術監視モニター機器を導入しております(医療設備参照)。これらの医療機器は,避妊手術などのマイナーサージェリーにおいて同じように活用され,いかなる手術の場合でもより安全な麻酔や手術を可能にしています。
  しかし,全身麻酔で行う動物の手術では,術前には予測のできない問題や特異体質による異常が起こる可能性も全くないとはいえません。このため外科治療に関しては,いかなる場合においても,ある程度のリスク(危険性)を伴うことをご理解して頂く必要があります。当院ではこれらのことを十分にご説明させて頂き,その点を飼い主の方に同意して頂いた上で,手術を行っています。
 

緊急の手術を除いて原則として予約制になっております。
去勢・避妊などの不妊手術や全身麻酔を必要とする歯石除去などについては完全予約制となっておりますので,あらかじめお電話でご連絡下さい。
手術前は,犬や猫では通常12時間程度の絶食が必要になります。
 

手術の方法や危険性などについて十分な説明を受けて頂きます。
手術時の手続きは入院時の手続きと同様です。
 

手術の際に来院して頂き手術時に立ち会って頂くことは可能です。
通常は手術中はご家族の方には待合室または診察室でお待ち頂くことになります。
原則としてご家族の方が手術室内に入室することは衛生管理上できません。
ご要望があれば,窓越しまたはモニターテレビを通じて,手術を見学して頂くことは可能です。ただし,動物医療関係者や医療関係者の方以外の一般的な飼い主の方々に手術のリアル映像を見て頂くことに関しては,精神衛生上,あまりお勧めできません。もし,手術見学中に,飼い主の方が途中で気分が悪くなったり,気を失われたりした場合に,すぐにこちらの対応ができないことも予想され,その際の責任は当院では負いかねますことをご了承下さい。
手術終了後は,窓越しまたはモニターテレビを通じて,動物の様子を見て頂いたり,ご希望により手術時の写真を見て頂くことは可能です。
  ※手術時の立ち会い,見学,術後の面会等は,あらかじめ獣医師にご相談して下さい。
 

手術室は,手術準備室の2つの自動ドアによって処置室と隔てられており,さらに手術準備室入口と手術室入口には靴底や手術室専用スリッパに付着したほこり汚れが舞い上がったり,手術室内に靴ほこりが進入しないための工夫がなされています。(医療設備参照)
手術室ならびに手術準備室には24時間空気清浄装置が作動し,さらに手術室内は殺菌灯によりクリーンに保たれています。
手術室内には全身麻酔器,モニター機器ならびにさまざまな手術装置など最新で高性能の医療機器が揃えられており,定期的な整備点検もマニュアル化されています。
  ※詳細は病院案内の中の施設紹介ならびに主な医療設備をご覧下さい。
 

手術を受ける動物は,病態の把握,麻酔リスク判定のため検査を行います。
手術前には病態により点滴や輸血などの内科的治療がまず行われます。
まず鎮静剤を投与して処置室で毛刈りと予備消毒を行います。
手術室に運ばれた動物は,麻酔導入後,手術台に保定されて手術部位を完全消毒します。
麻酔の維持は通常吸入麻酔により行い,呼吸管理は必要により筋弛緩剤を併用して人工呼吸器で行います。
麻酔中は,最新モニター機器を利用して動物の状態を注意深くモニターします。
麻酔中は,輸液ポンプを使用して静脈内点滴が行われます。
手術は,通常3〜5人以上(術者・助手・器械係,麻酔係,外回り)で行います。
手術終了後は,回復室に運ばれ十分な意識が戻るまで体温,心電図モニターおよび必要によっては血圧モニターやパルスオキシメータ(酸素飽和度)などがモニターされます。
当院では術後の疼痛緩和のための鎮痛処置を術前から積極的に行っております。
手術の結果については,術後随時あるいは退院時に詳しく説明させて頂いております。
 

 

 



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